質量を分析するとはなんたるか

仰々しいタイトルで始めてしまいましたが、前回の続きです。 理論的に計算したモノアイソトピック質量みたいなものをいつまでも扱うのであれば、大した難しさはないのですが(知らんだけ)、実際に分析するとなると話は別らしい。

実分析の結果をどうみるか

質量分析計の単純性能は

  1. 分解能(Resolution)
  2. 質量精度(Mass Accuracy)

で決まる。 質量分析計で採取したデータは横軸にm/zをとったスペクトルが膨大に集まったもので、このスペクトルはイオン検出器が受け取った電気的な信号の波形である。この波形がシャープであればそれだけ、より精度良くm/zを求めることができる。一方で、理論値と計算値のズレについても着目しなければならない。たとえシャープな波形が得られたとしても、ズレていては元も子もない。つまり、質量精度はAccurate MassとExact Massの差である。

質量精度がいいと、何がいいの?

質量精度がいいと、分析して得られたスペクトル情報から、もとの分子式を精度良く推定することができるようになる。

ちなみに、質量精度の単位はない。 {質量精度 = {|理論値 - 測定値|}/{理論値}}だからである。 しかしまぁ、これをよく見ればわかるのが、m/zが大きいところを対象に計算すると、単純に分母が大きくなるので質量精度は小さくなりそうだ。 質量精度は小さければ小さいほど、良い値である。 つまり、どれくらいのm/zを対象にして計算した質量精度か、というところを明記しておかないと、大した意味をなさないようだ。

多価イオン解析の足がかり

この質量精度は多価イオン解析にとって最も大切な考え方。 そもそも多価イオン解析とは、多価イオンとして検出されるものがあり、これは便利だぞ、と言わんばかりに計算し、もとの分子式を言い当てようというものだからである。 多価イオンとして検出される代表格がタンパクである。 検出されたものが何価なのかがわからないことには、質量が決まらない。そこで、スペクトル間のm/z差を見る。多価イオンみたいなものは、だいたいm/z差が1くらいの感覚でスペクトルとしてでてくる性質がある。しかし、実際のスペクトルを見ると「あれ?0.5くらいしかないぞ?」となる。ここでm/zは電荷数で割っていたことを思い出し、0.5×価数 = 1的なことなんだなと思えば、2価であることが分かる。つまり、 価数は、m/z差の逆数 でだいたい分かるのである。

今日はここまで。。。